給料・退職金請求権は短期の消滅時効にかかります。
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賃金や退職金が支払われなければ、労働者が生活していくことはできません。賃金の不払いは当然のこと、その一方的な切り下げも原則として許されません。また今日では、名ばかり管理職の残業手当未払いも大きな社会問題となっております。
会社に対して、支払われるべき賃金の支払いなどを求めることができます。
就業規則等で支給することが定められていれば、各種の手当も賃金に含まれます。そして、賃金を、会社が一方的に減額して支給することは原則として許されません(全額払いの原則。労基法24条1項)。会社が業績悪化を理由に、真っ先に手当部分をカットすることがありますが、手当であってもカットされれば生活に大きな影響が生じます。
労働者は、会社に対し、未払いの賃金額、及びそれに対する(賃金支払日の翌日から)支払い済みまでの遅延損害金の請求が可能です。労基法120条1号では、賃金の全額払いの原則に違反する行為に対し、30万円以下の罰金を科すことができる旨、定めています。
なお、退職手当以外の賃金は、支払日の翌日から2年間が経過すると消滅時効にかかり、もはや請求できなくなってしまいます(労基法115条。退職手当は5年間)。
また、未払賃金の遅延損害金の利率は、会社の通常の未払賃金への遅延損害金であれば年6%です(商法514条)。ただし、退職労働者に対する未払賃金については、「賃金の支払の確保等に関する法律(賃確法)」により、特別に年 14.6%と定められています(同法6条1項)。
使用者は、労働者との間で労使協定を締結し、それを労基署に届け出た場合などには、労基法32条の法定労働時間(原則として、1日8時間、1週40時間)を超える時間外労働を行わせることが可能になります。そして、時間外労働に対しては、基礎賃金(例えば、月給制の場合は、月給額を月における所定労働時間数で除した金額)の25%以上の割増賃金(残業代のこと)を支払わなければなりません(労基法37条)。
時間外労働時間の算定にあたり最も有力な証拠となるのは、タイムカード、IDカードですが、それらがない場合は、時刻記載のある業務日報、電子メールの送受信時刻、PCの立上げ時刻等が明らかにできる資料、労働者本人が作成したメモなどによって、時間外労働の実績を認定してもらえる可能性があります。
労基法41条2号の管理監督者については、労基法の労働時間に関する規定が適用されないため、時間外労働やそれに対する割増賃金といった問題は生じません。管理監督者に該当するかどうかについては、厚労省の通達によれば、①職務の内容、権限、責任、②出退社についての自由度、③その地位にふさわしい処遇などを具体的な判断要素として、肩書きにとらわれず、実態に即して判断すべきとされています。たとえば、メンバーの選定、評価、スケジュール決定への関与などが認められているものの、経営への関与や出退勤の自由が認められておらず、手当もない場合は、管理監督者性を否定される可能性が高いでしょう。
退職金は、労働協約、就業規則、労働契約などでそれを支給することや、支給基準が定められている場合は、使用者に支払義務のあるものとして(労基法上の賃金に該当し)、賃金に関する労基法上の保護を受けます。
また、わが国の退職金は、算定基礎賃金に勤続年数別の支給率を乗じて算定されることが多く、賃金の後払い的性格を有するとされています。但し、会社都合退職の方が自己都合退職より支給額が多かったり、懲戒事由などがあるときは減額ないし不支給になったりする場合があることから、功労報酬的な性格も有しているとされています。
労基法には退職金請求権の直接の根拠規定がないので、労働協約、就業規則、労働契約などの根拠が必要です。ただし、就業規則や労働協約などの定めがない場合でも、慣行、個別合意、従業員代表との合意などにより、支給金額の算定が可能な程度に明確に定まっていれば、労働契約の内容になっているといえます。
使用者が就業規則で退職金の支払時期を定めた場合はそれによります。但し、退職金が労基法上の賃金に該当する場合で、特段の定めがない場合には、権利者(労働者もしくはその遺族)の請求があれば、7日以内に支払わなければなりません。支払時期を過ぎると、遅延損害金が発生します。
賃金支払請求権の消滅時効期間は2年間ですが、退職金支払請求権の消滅時効期間は5年間です(労基法115条)。通常の債権(10年。民法167条1項)よりも短期の消滅時効にかかってしまうため、早めに弁護士にご相談することをお勧めします。
退職に際して、労働者が会社に相当の債務を負っている場合は、その債務の支払いに充てるべく、退職金を放棄・相殺したとされることがあります。判例によれば、退職金の放棄の意思表示は、「労働者の自由な意思に基づいてなされたと認められる客観的な状況が存在する場合」に限って有効とされています。
懲戒解雇が有効とされる場合に、それに伴う退職金の不支給・減額の適法性については、合法説、違法説(労働者の行為により会社が損害を受けたとしたら、これを立証して損害賠償請求をすべきであり、解雇労働者の退職後の生活を脅かすような不支給等の措置は許されないとする考え方です)、限定的合法説(一定の要件を満たせば、不支給・減額が許されるとする考え方)がありますが、判例の多くは、限定的合法説を採っているといわれています。